(4)教職員の人権感覚

 校内での人権教育研修の在り方や、子どもたちの確かな科学的認識と確かな人権感覚を育てるべき立場である教師の部落問題に対する科学的認識の低下が挙げられます。昨年度、市人研の実施したアンケート調査結果からもそのことは明らかです。さらに、保護者の思いや願い、子どもたちの実態をしっかり掴み、教育活動に反映させているのかという課題もあります。また、人権学習(同和問題・女性の人権・子どもの人権・高齢者の人権・障がい者の人権・外国人の人権・HIVなどの感染者の人権・さまざまな人権=人権8課題)に取り組む際、「当事者との出会い」や「当事者の思いや願い」を大切にした人権学習となっているのかという課題もあります。

(3)子どもの人権感覚

 本市学校においては、未だに差別事象が発生しており、昨年度、部落問題に関する差別事象が5件、「ガイジ」発言に代表される障がい者差別に関する事象が56件報告されています。その他にも、「キモイ」「ウザイ」「死ね」など、簡単に人を傷つけたり、見下したり、場合によっては、自分自身をも卑下したりする言動も多く見られます。
 人権教育のなかで学んだ知的理解(知識的側面)が、子どもたちの確かな人権感覚(価値・態度的側面、技能的側面)として身に付いているのかという課題があります。

(1)集団づくり

 人権教育の土台となる集団づくりにおいてもさまざまな課題があります。「自分勝手な行動をしたりする子」「休み時間一人で過ごす子」「グループをつくるなかで、いつも最後の一人になる子」「相談する友だちがいなく悩みを一人で抱えてしまう子」「勉強が苦手なことで友だちから排除される子」「家庭のさまざまな状況から、学校で落ち着かないために、暴言を吐いたり、暴力的になってしまう子」「いろいろな理由により、学校に来ることができない子」などさまざまな子どもたちがいます。その子どもたちが、くらしのなかにある「悩み」や「痛み」「本音」を綴り、語り、周りの子どもたちが、それらをしっかりと受けとめ、共感し、そして共に支えあう人間関係になっているのかという課題があります。

『ぬくもり』

 『ぬくもり』はすべての学校・学年で使うことのできる人権読本として生まれました。その目的は、『ぬくもり』の活用実践を通して、すべての子どもたちに「生活を見つめ科学的に考える力」「差別を見抜き、はね返す力」「仲間を大切にし、民主的・主体的に行動する力」をはじめとする、あらゆる差別からの解放をめざす力を育てることです。そのためには、家庭訪問で見えてくる、子どものより具体的な実態や、親の思いをていねいにつかむことが大切です。そしてその実態や思いを基盤として、教材を選定し、授業を行う必要があります。
 昨年度、『ぬくもり』研究推進委員会では、「子どもたちの人権感覚を高めるための、学習のあり方を探る」を研究テーマとして、おもに「ガイジ」発言に代表される障がい者差別をなくすための学習に関する教材を活用した授業の研究・実践を行ってきました。また新たに、セクシュアル・マイノリティなどの、「多様な性の在り方」についての研究・実践を始めました。その成果として、「ガイジ」発言を取り上げた教材を活用した人権学習を行う学校が増えてきていることや、指導内容や指導方法が、単なる「禁句指導」ではなく、「当事者の思いや願いを大切にした指導」へと工夫がみられるようになったことが挙げられています。しかし課題として、教師の人権感覚を磨くことの重要性が指摘されました。
 そこで今年度は、各学校での『ぬくもり』のさらなる活用をめざした取り組みを進めていきます。さらに、「多様な性の在り方」について、子どもたちを取り巻く環境や実態もていねいにつかみながら教材づくりを行っていきます。

<今年度の取り組み>

  • 「多様な性の在り方」についての教材作成に関する研究と実践

部落問題学習

 私たちがめざす部落問題学習とは、「差別を見抜き」「差別を許さず」、そして「差別をなくそう」と主体的に行動する子どもを育成していく学習です。そして部落問題学習を展開する際には、「部落差別の現実に深く学ぶ」という同和教育が大切にしてきた原則のもとに、被差別当事者の思いや願いをしっかりとつかんだ上で学習を展開する必要があります。
 昨年度、部落問題学習研究推進委員会では、「小中連携を踏まえた、社会科における部落問題学習」を研究テーマとして、「福岡発!今Dokiの部落史学習」を継続的に活用した授業の研究・実践を行ってきました。また、校内人権教育研修での部落問題に関する研修のあり方について研究・実践を行ってきました。その成果として、部落問題学習における「賤称語指導」のあり方についての授業実践を提起することができたことや、校内人権教育研修おける部落問題に関する研修の重要性が明らかになったことなどが挙げられました。しかし課題として、各学校や職員間での、部落史・部落問題学習の取り組みに対する認識の差や、研修などの取り組みに大きな差があることが挙げられました。
 そこで今年度は、教師の部落問題に関する科学的認識を高める研修について研究・実践を行うとともに、子どもたちに、部落問題に関する科学的認識を身につけさせる学校と家庭が協働した取り組みの研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>

  • 賤称語の指導を前提とした授業プランの作成に関する研究と実践
  • 「賤称語の指導を前提とした」職員研修の在り方に関する研究と実践
  • 部落問題学習の入り口としての「部落問題の用語解説集」の作成に関する研究と実践

学力保障

 子どもの学力を保障していくためには、学校の授業のあり方だけを工夫するのではなく、子どもの学びを確かなものとするために、学校・家庭・地域の総合力で子育て・教育を進めていくことが必要です。つまり、学校での学力保障の取り組みを確かなものとするためには、子どもたちの「わかった」「がんばった」「できるようになった」というようなことを、家庭訪問を通じて伝えることも重要です。そして保護者にも同じ視点で子どもたちをほめてもらい、「もっとがんばろう」「もっとできるようになりたい」といった学習に対する意欲を高め、家庭学習の定着につなげるような取り組みが必要です。
 学力保障研究推進委員会ではこれまで、「学力」の3つの視点のうちの「学習理解力」にスポットをあて、特に、検証軸の子どもが「勉強がわかった」「勉強って楽しい」といえる授業づくりこそが、すべての子どもたちの学力保障の土台となると考えてきました。そして昨年度は、「厳しい課題をもつ子どもを中心に据えた授業づくり」を研究テーマとして、「型」や「カルタ」を活用したわかる授業づくりの研究・実践を行ってきました。その成果として、「厳しい子どもたちの授業に対する意欲の向上や、学習理解力の向上に一定の成果があった」などが挙げられました。しかし課題として、「子どもたちの授業に対する意欲の向上が、必ずしも家庭学習の定着、ひいては学力の向上につながっていない」などが挙げられました。
 そこで今年度は、学力保障の取り組みが、「ほめてほしいことを・ほめてほしいときに・ほめてほしい人から」ほめてもらい、「もっとがんばろう」「もっとできるようになりたい」といった学習に対する意欲を高め、家庭学習の定着、ひいては学力の向上につながるような取り組みの研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>

  • 厳しい子どもの実態をしっかりと把握し、子どもの姿から始まる教材研究を進め、子どもの姿を通して教師の実践を考察していく過程を大事にした学力保障の研究と実践

人間関係づくり

 私たちがめざす学級集団づくりとは、子どもたちが学級の中で、自分の思いを語り、それを共に支えあう学級をつくることです。そしてこれまで市人研では、「被差別部落の子どもをはじめ、様々な課題を背負わされている子ども(=厳しい子ども)」を中心に据えた集団づくりに取り組んできました。それは、学校で見る「子どもの表面的な姿」や、Q-Uアンケートなどの客観的データのみに頼った集団づくりだけではなく、家庭訪問で見えてくる「子どもの家庭での姿や、さらに親の思いや生き様」など、「子どもたちのくらしや育ち」もしっかりとつかみながら、それを基盤として子どもと子どもをつなぎ、そして集団づくりへとつなげていくことなのです。
 昨年度、人間関係づくり研究推進委員会では、「人間関係づくりにつなげる、家庭訪問の取り組み」を研究テーマとして研究・実践を行ってきました。その成果として、教師が子どものことを深く知り、子どもや家庭とつながる手だてとしての家庭訪問の必要性については確認できました。しかし課題として、子どもと子どもをつなぎ、そして集団づくりへとつなげるまでには至っていないということが指摘されました。
 そこで今年度は、人間関係づくり・集団づくりの取り組みについて振り返り、これまで積み重ねてきた研究と実践を活かしながら、「厳しい子ども」たちが、「毎日、楽しく学校に通える」ような取り組みの研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>

  • 家庭訪問で見えてきた子どもの実態を生かした、人間関係づくり・集団づくりの研究と実践

(3)信頼できる先生がいる

 子どもにとって、学校に自分のことをわかってくれている先生、信頼してくれている先生がたくさんいることも、楽しく学校に通えるための重要な要素のひとつです。
 子どもたちから信頼される先生になるためには、

  • 子どもを知る
  • 教師の人権感覚を磨く
  • つながりをひろげる

という昨年度の活動・研究課題に取り組んでいくことが、前提です。

(2)友だちがいる

 「友だちがいる」ということも「学校の楽しさ」の重要な要素のひとつです。
 すぐにたたいたり、悪口をいったり・・・・。クラスにはさまざまな子どもがいます。その行動が自分には理解できない友だちに対して、「また、○○やん・・・。「○○ちゃんは悪い子だから・・・」などどきめつけたり、「どうせ言ってもわからんもんね」とあきらめてしまうことがあります。
 逆に家庭でいろいろな悩みを抱えている子どもたちは、「みんなとは違う」「自分だけ」という気持ちから、「だれもわかってくれない」「みんなには知られたくない」という気持ちになり、時には自分自身や家族のことを否定的に見てしまい、その気持ちが学校での様々な行動として表れてくることがあります。
 一人ひとりが違ってあたりまえだという感性を育てることは大事なことです。その手立てとして集団づくりがあります。集団づくりとは、一人ひとり違った個性・生活をもった子どもたちを、ていねいにつないでいくこと、そして、お互いの存在を尊重しながら信頼で結ばれた関係をつくることです。
 そのためには、子どもたちが、友だちのよさだけでなく、つらいこと、きついことなど一番言いにくいことだけど、でも、本当は一番わかってほしいことを理解しあう必要があります。
 教師がわかっているだけ、教師と子どもの関係だけではだめなのです。子どもたちが、学校では見えない日々の生活を互いに語り合えるような関係をつくることで、「家でそんなことがあったんだ」「わたしといっしょだ」などと互いに共感しあったり、「○○さん、がんばってるな」「○○さんってやさしいな」などと友だちのがんばりやよさに気づいたりしていきます。そんなあたたかい受けとめの中で、「みんなが聞いてくれた」「自分だけとちがう」という安心感をもつことができるのです。
 このような関係をつくることが、ありのままの自分を受けとめてくれる「友だちがいる」ということにつながるのです。

(1)勉強がわかる

「勉強がわかる」ということは、子どもたちにとって「学校が楽しい」ことの重要な要素のひとつです。「低学力」の子どもたちが、授業中どうしているのかを見つめ、その子どもたちの表情や動きを見ながら、授業のありかた、すすめかたを考えていくために、検証軸の子どもを設定しました。そして、検証軸の子どもを据えた授業を重ねることで、「低学力」の子どもの側から授業のあり方を問い直し、わかる授業づくりを模索してきました。
 また、「低学力」の子どもが、楽しく、学びやすくなるように、導入から終末までの教材や展開をしっかり組み立て、単元全体を1つの流れとして構成する作業が不可欠であるということから、「授業プラン」づくりの取り組みも行ってきました。
 さらに、学校の1日の大半を占める授業の中で、子どもたち一人ひとりが、「わかった」「やればできる」「がんばってできるようになった」、そしてそこから、「もっとがんばろう」「もっとできるようになりたい」というようにして、学びの過程における成功体験を積み重ねさせていくことを大切にしなければなりません。そして、その授業中の成功体験を、家庭訪問などを通じて家庭に伝えることで、保護者にも同じ視点で子どもたちをほめてもらうこともできるのです。
 これらのことが自信となり、自分についての肯定的な見方ができるようになり、自尊感情が育つことにつながっていけば、次の学習への意欲や積極性が生まれ、ひいては、自己実現をめざすことへとつながっていきます。
 「勉強がわかる」ことの土台として授業のあり方も大切です。授業とは、教師と子ども、そして、子どもと子どもの信頼関係を育む大切な場です。子どもが学校に来るのが楽しいということは、クラスで安心して学べるという落ち着いた授業をつくっていくことが必要です。

 まちがったらどうしよう。ドキドキしながら発表したら、「○○さんと同じです。」「○○さんに付けくわえます。」「○○さんの考え方は○○だと思います。」と友だちが考えをつないでくれた。発表してよかった。

 教師や友だちからの言葉の暴力、「わからない、できない」ことが苦痛に感じられる授業、授業中に失敗したりまちがえたりしてからかわれる授業、これでは落ち着いて集中して学ぶことが保障されないだけでなく、教え合いや学び合いが行われにくいクラスになってしまいます。
 教師も子どもも、もう一度、友だちがまちがった答えを出してくれたことが自分たちの考え方を確かめたり、深めたりするために役立っているということを再確認し、「友だちの誤りや失敗を大切にする」という考え方や雰囲気づくりを、日常的にしっかりと根づかせていかなければなりません。