活動・研究課題

すべての子どもたちが毎日楽しく学校に通えるようにしよう!

すべての学校の課題として

 私たちは、被差別部落に家庭訪問をすることで「家庭や地域での生活や乳幼児期の体験なども含めて子どもたちをまるごとつかみ、そこから授業づくりや集団づくりにつなげていく」ことを学びました。そして、そのことを土台に「被差別部落の子どもをはじめ様々な課題を背負わされている子どもたち」を中心に据えて、学力保障や集団づくりに取り組んできました。同和教育の本質はまさに「子どものことを知る。そしてその実態からスタートする」ということだったのです。人権教育に変わっても、この本質は変わりません。
 しかし、同和教育が、教育の「特別対策」だと考えられ、「同和教育は関係校だけが取り組むもの」「同和教育は部落の子どもに対しての教育」と誤って捉えられたり、矮小化されたりすることがありました。その結果、「子どものことを知る。そしてその実態からスタートする」という同和教育の本質が広まっていかなかったことも事実です。
 今、「低学力」や荒れ、不登校などの問題や奨学金受給率が年々増加していることなどの様々な実態は、被差別部落の子どもたちだけに現れているわけではありません。部落差別の実態として捉えられてきたこれらのことは、被差別部落だけの課題ではないのです。階層間格差が叫ばれる中で、地区外にも、低位の階層に置かれ、生活にも学力的にも苦しんでいる子どもたちがたくさんいます。つまり、すべての学校での共通の課題なのです。
 私たちは、『「被差別部落」の子どもだから』『「在日」の子どもだから』『「障がい」を持った子どもだから』という被差別のカテゴリーで子どもたちを見るのではなく、同和教育の「子どものこと知る。そして、その実態からスタートする」という本質を、人権教育として全体化・普遍化していかなければなりません。
 そして、子どもの実態をより深く知る中で、子どもの学力獲得や基本的生活習慣の定着を阻害している根本的な要因をつきとめ、課題解決の糸口を模索し、さらなる取り組みをつくっていきましょう。

私たちがめざす人権教育とは

(1)子どもを知る
○子どもを深く知ることから

 遅刻がとても多いA君のことです。彼のことは「毎日遅刻する子」とレッテルが貼られています。毎日のように遅刻するので、理由も聞かず頭ごなしに注意する教師もいました。
 しかし、彼と話をする中で、知らなかったことが見えてきました。母親は仕事の時間が不規則で、そのため、彼が起きる前に出勤したり、帰りが夜中になり、登校時間はちょうど熟睡していたりで、彼を起こしてくれる人がいないので、彼も起きられないことが多いのです。もちろん彼自身の努力も必要ですが、何とか学級でサポートできないかと考えました。仲のよい子が電話したり、迎えに行ったりすることで遅刻の回数がずいぶん減ってきました。今ではすっかり生活のリズムが身についてきたようです。

 子どもを中心に据えた実践をつくるためには、子どもたちのことを深く知ることが必要です。しかし、私たちは子どもたちの「表面的な部分」だけを捉えて、子どもを知っているつもりになっているのではないでしょうか。おそらく多くの子どもたちが、学校で見せている姿と家庭での姿が違うだろうし、親や教師など大人の前の姿と友だち同士の中での姿も違うはずです。子どもたちはそれぞれのくらしの中で、いろいろな姿を見せながら生活しています。
 そうした現状の中で、実態を把握する手立てのひとつとして、客観的なデータを使う場面が増えてきています。例えば学校生活や基本的な生活習慣に関わるもの、人間関係づくりに関わるもの、学力に関わるもの、自己認識や自尊感情に関わるものなどがあります。これらのデータをもとに全体的な傾向を把握し、それに応じた取り組みをつくっていくことは大切なことだと思います。しかしその一方で、全体的な傾向を見るだけではなく、個別の課題にも目を向けなければなりません。
 客観的なデータだけでは、子どもたちのより具体的な姿は表れません。例えば、「朝食をほとんど食べない」という回答があっても、その子がなぜそのような状況に置かれたのか、回答の奥にある事実をつかむ必要があります。なぜそう答えざるを得ないのかは一人ひとり違うはずです。データの裏には、親子関係のあり方や家庭状況に対する不安や思いがたくさん隠されていると思います。私たちはそこに目を向け、気づくことができる教師でありたいと思います。特に「低学力」や「不登校」、「荒れ」などの姿を見せている、いわゆる厳しい子どもたちにとっては、彼らの奥底にある、より具体的な課題をつかみ、それをていねいに克服していこうとする営みが求められます。そのためには、一口に子どもを知るといっても、子どもたちの何を知らなければならないのか、子どもたちの姿をどのようなスタンスで見ていくのかがとても大切になってきます。
 私たちは、どんな学級にすれば安心して学校生活を送れるか、どんな教材を使えば子どもたちの日常とつながった授業をつくれるか、親たちが学校に対してどんな思いを持って登校させているかなど、子どもたちのくらしや育ちをつかみながら、授業や、学級集団をつくっていかなければなりません。
 また、くらしを知ることで、私たちが子どもたちを見る視点が変わり、子どもたちの小さな変化にも気づくことができます。その気づきをスタートに、子どもたちとの信頼関係を深めることもできると思います。私たちの教育活動は、子どもたちのくらしや思いを知ることからスタートしなければなりません。そして、子どもの現実や思いからスタートした取り組みこそが学級・学校すべての子どもたちが生き生きと生活を送ることにつながります。

○ 家庭訪問を原点に

 4月始業式。病気で休んだ子どもがいます。放課後、先輩から「休んだ子どもはいなかった。」と聞かれ、私は「います。」と答えました。するとその先輩から「その子の、学級開きは?」と聞かれ、「クラスの子どもに休んだわけを話しました」と返しました。すると間髪入れず先輩から「家庭訪問に行ってその子の学級開きをしなくていいの」と言われました。私はそのとたん居ても立っていられなくなり、先輩の話を途中で遮り家庭訪問にいきました。
 家に訪問すると、保護者とその子どもが玄関で迎えてくれました。子どもの顔は、始めは緊張気味でしたが、私から自己紹介をしてクラスのみんなが心配していること等を伝えると次第に笑顔になってきました。
 家庭訪問を終え学校に帰る時、家庭訪問に行かなかったら、あの子は学校に登校してクラスの仲間や私と出会うまで、あの緊張した顔をしていたのだろうと思います。「行ってよかった」と思える家庭訪問でした。

 過去、同和教育に取り組んだ先達は、「とにかく行けば子どものことがわかるだろう」あるいは、「何か気になるから」と、子どもを知る手法のひとつとして頻繁に家庭訪問に行っていたそうです。「教育は、今日行く」と私たちに教えてくれた先輩もいます。そして、家庭や地域に出向くことから住環境の厳しさだけでなく、部落差別ゆえに学校で十分に学力がつけられなかったことや、そのことで就労の機会を奪われてしまったという事実を目の当たりにしました。まさに部落差別を肌で感じてきたといいます。そして親や青年たちから語られる被差別体験や、学校や教師がいかに冷たかったかなどの言葉を教育への問題提起として捉えてきました。不登校の子どもたちや、「荒れ」の姿を見せる子どもたちのところへの家庭訪問でも同じように、学校教育への問題提起がなされているはずです。
 家庭訪問の目的は、子どもを知ることだけでなく、親の思いや生き様を知るためでもあります。ときには親の価値観と向き合わなければならないこともあります。しかし、親自身が学校から受け入れられず、教育に不信感しか持てていない「教育から遠い位置にある家庭」だからこそ、私たち教師は、教育の力で改善していくことをめざし、目の前の子どもたちの学力保障や進路保障、集団づくりに取り組んできました。そしてこの営みを受け継ぐ中で、私たち自身も変わっていく必要があることに気づかされました。
 また、家庭訪問に限らず、常に子どもの情報を知るためのアンテナを張り巡らすことが必要です。そうやって教師の側からの「つながろう」「語ろう」とすることが、子どもたちや親たちにとって、学校や教職員に対する安心感や信頼感として伝わるはずです。

(2)教師の人権感覚を磨く

「先生は、人権学習のときだけ『いい人』になるっちゃんね」
「そうそう、日頃と言いようことが全然違う」
子どもたちのこんな声を聴きます。

 課題を克服するための実践や取り組みをつくるには、教師自身の姿、すなわち教師の人権感覚が重要
です。ここで提起されていることは、私たちの普段の態度や言葉などに、私たちの人権感覚そのものが浮き出ているということです。私たち教職員が、子どもたちを一人の人間として、尊敬すべき存在として関わっているかどうかが問われているのです。私たち教職員より、確かな人権感覚を持っている子どもたちはたくさんいます。「本当に信頼できる先生なのか」ということを、子どもたちはしっかり見抜いています。言い換えると、子どもたちが人権感覚を身につけるためは、「人権」というものを「教師が教える」だけではなく、教師自身が人権感覚を高めることが必要なのです。
 また、職員室の人権文化が、そのまま学校・学級の人権文化になるとよくいわれます。子どもたちにとって、私たち教職員の生き方は、教育課程や授業のカリキュラムでは表現されない、隠れたカリキュラムとなっているのです。私たち教職員自身の中に、差別を生み出す土壌がないかをしっかりと確かめあっていかなければなりません。
 うれしかったこと、楽しかったことを共に分かち合うこと、とてもすてきなことと思います。ただそれだけでいいのでしょうか。学力や生活の厳しさをもつ子どもたちにとって、安心・安全な空間とはきっと「きついこと」「苦しいこと」「わからないこと」などを口に出しても大丈夫な空間だと思います。子どもたちが内に秘めている痛みやつらさが語られ、そしてそこに共感してくれる仲間がいると感じられたときこそ、人のぬくもりを感じることができると思います。
 こんな仲間づくりをするためにも、教師の確かな人権感覚は必要不可欠です。私たち教職員が子どもたちの痛みやつらさに共感できるのか、子どもたちの自尊感情を高める重要な他者になりえるのか、問われるところです。このような人権感覚に満ち溢れた空間を子どもたちと共有するためには、私たち教職員が子どもたちと共に学びあうことを忘れてはいけません。

(3)つながりを広げる

 私が最初に赴任した学校、そこには同和教育に熱を持って取り組んでいる教職員集団がありました。私が、気になった子どものことを担任の先生に尋ねたら、その先生はもちろん、兄弟児の担任の先生、これまでに担任をしたことのある先生が、その子に関わるエピソードを語ってくださいました。職員室では常に子どものことが語られている、そんな学校でした。

 職員室で子どもの姿が話題になっていますか。世代や経験の違いはもちろん、教師自身の価値観も多様化しています。「教育」を掲げた書物も氾濫しています。「多忙化」で子どものことをじっくり話せない実態もあります。またそのことを理由に子どものことをじっくりと話そうとしていない実態もあるのではないでしょうか。そんな時代だからこそ、逆に、目の前の子どもの姿やくらしについて具体的に語り合う必要があります。だからこそ日常の職員室での会話がまさに研修会になるはずです。もちろん「講師」はお互いであり、話題となった子どもや親の姿から学ぶこと、考えることがたくさんあります。ときには子どもを軸として指摘しあう関係も必要です。
 学級の実態、授業の様子、部活のことなど一人の子どものことを多面的に見ていくためにも、職員室で語ることを大切にし、語ることを通して、まずは教職員同士の信頼関係を築いていきましょう。当然私たちが学んできたことを、次の世代を担う若者たちに継承していくことにもつながります。
 一方、「子ども」や「人権」という共通のキーワードを持ちながらも、今まで関係をつくりきれていなかった分野の方々とも新たにネットワークを構築していくという視点も必要だと思います。

 それでは、わたしたちのめざす人権教育を、子どもたちの姿を通して見たときには、どうでしょうか。それは、すべての子どもたちが、毎日楽しく学校に通えることだと考えます。

すべての子どもたちが、毎日楽しく学校に通えるようにしよう!

■すべての子どもたちとは

 私たちの実践の基本は言うまでもなく子どもたちのためであり、子どもたちの自己実現をめざして穂日の取り組みを行うことです。その中で「すべての子ども」とはいったいどういうことなのでしょうか。
 私たちは、被差別の状況に置かれている子どもたちや厳しい課題を背負わされている子どもたち、「低学力」の状況に置かれている子どもたちなど、教師から、集団から、学習から一番遠くにいる子どもが生き生きと活動してこそ、すべての子どもたちに行き届く実践であると考えてきました。検証軸の子どもを設定してきたのは、その意味でもあります。これらのことは、これからも絶対に大切にしていかなければならないことです。
 そして、さらに次のような考え方へ広げていく必要もあります。
 自尊感情の構成概念を、①社会的領域、②学業的領域、③家族、④身体イメージ、⑤全体的なイメージの5つに分類することがあります。わたしたちは、⑤の全体的なイメージで子どもを見て、この子は自尊感情が高いから、特に課題はないなどと考えてしまってはいないでしょうか。
 しかし、それぞれの領域で、子どもを見てみると、例えば、学業的領域では自尊感情は高いが、家族や身体イメージでの領域では低いといった子どもたちがいるかもしれません。
 つまり、私たちは、どの子も、その子なりの課題を抱えている可能性があると考えなければいけないのではないでしょうか。そのような子どもたちを見過ごさないような取り組みをつくっていくことが、差別をなくすことにもつながっていくと考えます。
 だからこそ、「すべて」の子どもたちなのです。

■楽しく学校に通えるためには

 大切なのは、「楽しく学校に通える」という意味です。
 子どもたちの姿を通して見たときに、楽しく学校に通えるためには、

というこの3つのことが、とても大切です。

■すべての学校で「集団づくり」をもう一度

(1)人権教育をめぐる現状と課題
 私たちはこれまでの活動・研究課題の中で、「同和教育のなかで積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評価(総会資料9)」を踏まえ、人権教育として再構築していくことの重要性を教育現場に提起してきました。またこのことは、1996年に出された地域改善対策協議会「同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について(意見具申)」(地対協意見具申)において、「今後、差別意識の解消を図るに当たっては、これまでの同和教育や啓発活動のなかで積み上げられてきた成果とこれまでの手法への評価を踏まえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築すべきと考えられる。」と提起されています。
 しかしながら、現在行われている人権教育は、同和教育の成果と手法が十分に引き継がれているとは言えず、未だ多くの課題が解決されないまま残されています。

①学力保障・進路保障
 多くの中学校で実施されている学力に関する調査から、関係校と関係校外の学力格差は未だに解消されていないという結果が出ています。このことは、中学校3年間のみならず、小中9年間を見通した学力保障の取り組みに関わる課題です。また、低学力の子どもたちに対して、「分かる」授業がきちんと行われているのかといった課題もあります。さらに、経済格差の問題が子どもたちを厳しい状況に追い込み、家庭の経済状況によって子どもたちの将来が決まってしまう状況さえまねいています。このことは、小中9年間を見通した進路保障の取り組みが、将来に展望をもてるような取り組みとなっているのかという課題でもあります。

②子どもの人権感覚
 学校現場でも、「ガイジ」発言に代表される障がい者差別に関する事象や賤称語を使った差別事象、在日外国人に関する差別事象が起こっています。その他にも、「キモイ」「ウザイ」「死ね」など、簡単に人を傷つけたり、見下したり、場合によっては、自分自身をも卑下したりする言動も多くみられるなど、子どもの人権感覚に関わる課題があります。

③教師の人権感覚
「子どもの人権感覚」に関わる課題の背景には、「教師の人権感覚」に関わる課題があります。
 昨年、福岡市教育委員会が出した教職員の同和問題(部落差別)に関する調査では,部落差別の現実を知らない(もしくは気づいてない・気づこうとしない)若い世代が増えていることが明らかになりました。また福岡市内で起こった連続差別落書き事件についても、市教委主催の悉皆研修において、「絶対に許すことのできない差別事件」として学んでいるはずです。しかしながら、約3割の教職員が現在もこのような差別が起きているという実態を認識していないということもこの調査結果から明らかになりました。
 これらのことは、若い世代に限っての課題ではありません。教師が正しい科学的認識を身につけることはもちろん、研修に参加する際の意識の問題など、「特定職業従事者」としての立場を認識し、その責務をきちんと果たしているのかという課題があります。

(2)さまざまな課題を解決するための「集団づくり」の重要性
 私たちは、これらの課題をはじめ、「いじめ」や「不登校」など、他のさまざまな課題を解決していくための人権教育に取り組んでいかなければなりません。
 しかし、これらの課題を解決するために、まずは「集団づくり」に取り組んでいく必要があります。なぜならば、集団づくりが、学力保障や進路保障、子どもの人権感覚など、さまざまな課題を解決する土台となると考えるからです。つまり、課題を解決するための取り組みを、より効果的なものにするためにも、土台となる集団をどのようにつくっていくのかということが重要となるわけです。また集団づくりを行う際、教師の人権感覚が大切になってきます。
 そこで市人研では、今年度の重点的な取り組みとして、「集団づくり」を提起します。

(3)「集団づくり」における現状と課題
 現在行われている集団づくりは、同和教育の成果と手法が十分に引き継がれているとは言えず、さまざまな課題を解決するための「土台」となっていません。
 例えば「子どもの学校での“表面的な姿”」しか見ず、集団づくりを行っていないでしょうか。「客観的データ」だけに頼った集団づくりを行っていないでしょうか。「クラスで一番厳しい課題をもつ子どもの存在が無視」された集団づくりになっていないでしょうか。「子どもたちがくらしでつながらず、ただ楽しい」だけの集団づくりになっていないでしょうか。「ルールや規律を守らせる」ことに重きを置いた集団づくりになっていないでしょうか。私たちは、集団づくりの取り組みのなかで、ルールや規律を守らせることは重要なことだと考えています。しかし、「その子どもが、なぜルールや規律を守れないのか」「その子の生活背景や、保護者の教育に対する思いは、どのようなものなのか」といったことを知り、課題解決のための根本的要因をていねいに掴んだうえで集団づくりへと取り組む必要があると考えています。またそのことは、「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]~指導等の在り方編~:第二章・第一節1-(3)人権尊重の理念に立った生徒指導」において、「積極的生徒指導の取組と人権教育」に明記されています。

(4)私たちのめざす「集団づくり」とは
 ① 「集団づくり」で大切にすべきこと
 では、私たちめざす集団づくりとはどのようなものでしょう。
集団づくりの目的は、差別のない世の中を創造していくために、つながりを生きる力にする子どもたちを育てることです。そして、一人ひとり違った個性・生活をもった子どもたちを、ていねいにつないでいくことであり、お互いの存在を尊重しながら信頼で結ばれた関係をつくることです。その上で、子どもたちが将来、差別のおかしさや不合理に気づき、差別をなくしていこうとする社会を創造していくために、一人ではなし得ないことも、仲間とつながり、力をあわせればなし得ることも可能であるということを、学校や学級という小さな社会集団の中で体験させていくことです。
 そのような集団づくりを行う上でまず重要なことが「子どものことを知る」「つなぐ」という2つのキーワードです。子どもを知ることで、子どもや保護者とつながり、その結果、子どもや保護者のことをより深く知ることにもつながります。そのことをもとに、子ども同士、子どもと保護者、保護者同士をつないでいくことが必要なのです。
 そしてもう一つ重要なことが、教師の人権感覚です。人権感覚に欠ける教師の言動からは、子どもたちに正しい人権感覚を育てることはできず、当然、お互いの存在を尊重しながら信頼で結ばれた集団にはなり得ません。だからこそ、教師の確かな人権感覚を高めていくことが必要です。

 ② 「子どもを知る」そして「つなぐ」ために
「子どもを知る」そして「つなぐ」ための手だてについて整理してみます。

○「家庭訪問」は、「子どもを知ることはもちろん、親の思いや生き様も知る」ための手だてで す。そして「学校で見せる姿と、家庭で見せる姿の両方を知ることで、子どもの背景をしっか りとつかむ」ことや、「教師自身の思いや願いを保護者に伝え、協働した取り組みとなるよう 信頼関係を築く」ことが目的です。 
○「綴り方・生活ノート」は、「子どもたちの抱えている思いや願い、悩みを引き出す」ための 手だてです。そして「それらを丸ごと受け止め、集団のなかで同じような思いや願い、悩みを もっている子どもたちを出会わせ、互いの思いを共有させ、仲間意識を育てる」ことが目的で す。
〇「Q-Uアンケートなど」は、「現在の学級の状態や、人間関係を客観的に把握する」ための 手だてです。そして「今まで“何となく”や“経験から”といった、抽象的に見ていた学級の状態や 人間関係を、客観的データとして把握することで、課題を明確にし、より具体的な取り組みへ とつなげていく」ことが目的です。
○「学級だより」は、「子どもの思いや願い、そして教師自身の思いや願いを子どもたちや保護 者に伝える」ための手だてです。そして、「そのことにより、子ども同士、子どもと教師、教 師と保護者をつなぐ」ことや、「普段、“声”にすることが苦手な子どもたちの思いや願い  
 を、“文字”として伝えることで、互いを知り、理解しあう集団をつくる」ことが目的です。
○「アクティビティー」は、「より良い人間関係を疑似的に体験する」ための手だてです。そし て「疑似体験を通して、互いの存在を認め、より良い人間関係をつくるためのスキルを身につ ける」ことが目的です。
○「学級力アンケート」は、「これまで抽象的だった学級の状態を、客観的データとして把握す る」ための手だてです。そして、「取り組みの成果や現在の課題を分析し、これから取り組む べき方向性を明らかにし、子どもたちに主体的に取り組ませる」ことが目的です。

 その他にも、集団づくりに取り組むにあたっては、授業はもちろんのこと、「学級目標の設定」や「自主活動としての係活動」、「清掃活動」などさまざまなものを活用することができます。そして、その目的もさまざまです。
 つまり、「集団づくり」とは、すべての教育活動で行われるべきものなのです。そしてその根底にあるのは「子どものことを深く知る。そしてその実態からスタートする」ことだということは言うまでもありません。

(5)今こそすべての学校で「集団づくり」を
 上述してきたとおり、さまざまな課題を解決するためには「集団づくり」が土台となるべきことを提起してきました。
 そして、集団づくりの取り組みによって形成された「お互いの存在を尊重しながら信頼で結ばれた集団」は、学力保障・進路保障をはじめ、「いじめ」や「不登校」などさまざまな課題を解決していくに違いありません。
 今こそ私たちは、すべての学校で「集団づくり」に取り組んでいきましょう。

■具体的な実践

(1)研究推進委員会
 市人研では、学力向上研究推進協力校区事業や関係校研修会の中学校ブロックでの取り組みなど、中学校区内の学校・家庭・地域が協働した学力保障の取り組みを中心になって進めてきました。そして、その中で、小中が行事レベルの交流にとどまることなく、教育内容で連携していくことが、子どもたちの学力保障や進路保障の課題を克服していくことにつながると提起してきました。
 そのような経緯を受けて、各研究推進委員会では、小中(委員会によっては小中高)の教師が協働して研究を推進し、異校種間で連携した教育内容や研究体制のあり方について発信していきます。
 また異校種の教師の協働研究という特色を活かし、保幼小中高の連携教育についてリードしていきます。
 研究推進委員会の研究の成果が、各学校の実践につながっていくことを目標としながら、各研究推進委員会の研究の柱を整理しました。

【人間関係づくり】
 昨年度は、「家庭訪問で見えてきた子どもの実態を活かした、人間関係づくり・集団づくりの研究と実践」を研究テーマとして研究・実践を行ってきました。その成果として、子どもを深く知る手だてとしての家庭訪問の必要性について確認できました。また、家庭訪問で見えてきた子どもの実態を生かした、学級での人間関係づくりや集団づくり、授業づくりの取り組みへとつなげるという成果も挙げられました。
 今年度は、これまで積み重ねてきた研究と実践を踏まえ、「人間関係づくりとは何なのか」「集団づくりとは何なのか」を再度確認するとともに、家庭訪問で見えてきた子どもの実態を生かした人間関係づくり・集団づくりに関する更なる研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>
○ 家庭訪問で見えてきた子どもの実態を生かした、人間関係づくり・集団づくりの研究と実践

【学力保障】
 昨年度は、「厳しい課題をもつ子どもを中心に据えた授業づくり」を研究テーマとして、「型」や「カルタ」を活用したわかる授業づくりの研究・実践を行ってきました。その成果として、その有効性はもちろん、「学校と家庭との協働により、子どもの自己肯定感が高まった」「子どもをつなぐ集団づくりの取り組みが、書くことの前提となる“言葉の力”を高めることにつながった」などが挙げられました。しかし課題として、他教科への関連性や応用などが挙げられました。
 今年度は、これまで積み重ねてきた研究と実践を踏まえ、「ほめてほしいことを・ほめてほしいときに・ほめてほしい人から」ほめてもらい、「もっとがんばろう」「もっとできるようになりたい」といった学習に対する意欲を高め、家庭学習の定着、ひいては学力の向上につながるような取り組みの研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>
○ 厳しい課題をもつ子どもの実態をしっかりと把握しするとともに、その子どもを含めた、すべて子どもたちの学力を向上させるための、集団づくりを土台とした学力保障の研究と実践

【部落問題学習】
 昨年度は、「社会科における部落問題学習」を研究テーマとして、「福岡発!今Dokiの部落史学習」を継続的に活用した授業の研究・実践および、賤称語指導を前提とした教職員による校内研修のあり方について研究を行ってきました。その成果として、賤称語指導を行う上で基盤となる子どもたちや教職員の集団づくりの重要性が明らかになりました。しかし課題として、「いまだに学校現場に賤称語を指導することを前提として、校内で論議することの趣旨がきちんと伝わっておらず、論議は行われているものの、その内容が不十分のまま終わっているのではないか」ということが挙げられました。
 今年度は、これまで積み重ねてきた研究と実践を踏まえ、集団づくりを基盤に、賤称語の指導を前提とした授業プランの作成に関する研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>
○ 賤称語の指導を前提とした授業プランの作成に関する研究と実践

【『ぬくもり』】
 昨年度は、「子どもたちの人権感覚を高めるための、学習のあり方を探る」を研究テーマとして、「多様な性のありよう」について、教職員の実態調査に関する研究・実践を行ってきました。その成果として、「多様な性のありよう」に関する問題を人権課題だと捉えはじめている教職員が増えていることや、人権教育として取り扱うべきだという声が高まってきていることが明らかになったことなどが挙げられました。しかし課題として、まだまだ知識が不足していることや、教育実践や教材が不足していることなどが挙げられました。
 今年度は、「多様な性のありよう」について、正しい知識を身につけ、人権感覚を高めるための教材づくりに関する研究・実践を行っていくとともに、各学校で行われている授業実践を、さまざまな学校へ発信していく取り組みを行っていきます。

<今年度の取り組み>
○ 「多様な性のありよう」についての教材作成に関する研究と実践

【進路保障】
 昨年度は、「子どもたちの自己実現と社会参画を支える学習内容の創造」を研究テーマとして、小学校4年生の1/2成人式の教材や学習プランの作成・実践および、高等学校におけるキャリア教育に関する学習について研究・実践を行ってきました。その成果として、「教材を作成したことや学習プランを実践したことにより、子どもたちの将来の夢に対する興味関心が高まった」「奨学金等の内容や、雇用形態について正しい知識を学んだことで、子どもたちの日常の学校生活に変化が見られ、進路保障につながった」などが挙げられました。しかし課題として、「作成した教材や学習プランを、どのようにしたら、多くの学校現場で活用してもらえるのかについての工夫が必要」などが挙げられました。
 今年度は、あらためて、厳しい子どもにスポットをあてながら、新教材の活用や検証についての研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>
○ キャリア教育に関する学習プラン活用及び、活用後の検証に関する研究と実践

(2)各種研修会・学習会
 私たちのめざす人権教育を具現化し、各学校での実践レベルにつなぐ手法を広く発信していくために、各種学習会を充実させていきます。

【春期講座 】 4月19日(土)福岡ビル
 福岡市人権教育研究会の活動・研究課題の提起をうけ、内容を深めるための講座を開催します。

【夏期研究集会】 7月31日(木)~8月1日(金)福岡市民会館ほか
1日目は講座形式による学習会です。講師の話を聞いて、知識面や価値・態度面に関わる人権感覚を磨きます。2日目は、参加者の実践や経験、考えや思いなどを出し合いながら講師の先生と分科会をつくっていきます。

【福岡市人権教育実践交流会】(福岡市立小中学校長人権教育研究会との共催) 1月7日(水)
                                   福岡市民会館ほか
各研究推進委員会の研究内容の提起をもとに、各学校の実践を報告、交流します。学びあうことで、それぞれの取り組みの方向性を確かなものにしていきます。

【集団づくり実践交流会】3月27日(金)福岡市教育センター
参加者のみなさんの実践レポートをもとに、違う学校や校種の人たちとお互いを「めくりあう」ような意見交流をしながら、自分の取り組みを振り返り、次年度へとつないでいく会にしていきます。

【会員代表者会・会員交流会】
会員代表の方はもちろん、より多くの会員のみなさんに参加していただくことで、人権教育に関わる情報提供や最新情報による学習会、意見交流などをしていきます。

【人権教育基礎講座(旧 若い先生講座)】
採用5年以内の方や講師の方を対象にした講座です。各回、若い先生のニーズにあった講座内容を企画し実施していきます。

【今日行くサークル『つなぐ』】
一年間、固定のメンバーで行う学習会です。人権教育の基盤となる「部落問題学習」「集団づくり」について学びます。

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