進路保障

 家庭の経済状況や家庭環境と学力との関係を考えると、子どもたちは自分の意思とは関係のないところですでに描く夢が狭められ、将来の進路選択も限定されている可能性が高くなっています。すでに小学生の頃から「高校なんか行かない」と言っている姿も見られます。このような厳しい子どもたちの進路を保障するには、家庭訪問を通して、子どもたちの進路を阻害している、より具体的な要因をつかむ必要があります。その上で、進路に関わる情報を幅広く伝え、子どもたちが夢を描くための取り組みや、自己実現をめざす取り組みをつくることが大切です。だからこそ、小学校段階から系統的な進路学習をつくることが重要になってきます。さらに、学校での進路学習をより確かなものとするための学校や家庭・地域が協働した取り組みが必要なのです。
 昨年度、進路保障研究推進委員会では、「子どもたちの自己実現と社会参画を支える学習内容の創造」を研究テーマとして、これまで作成してきた小学校4年生から中学校3年生まで6年間のキャリア教育に関する学習プランのまとめと系統性について研究・実践を行ってきました。その成果として、小中6年間を見通した学習プランをキャリア教育の視点、人権教育の視点で再点検・再構築できたことが挙げられました。しかし課題として、作成した学習プランについて、中学校ブロックなどでの実践検証を行うまでには至っていないことが挙げられます。
 そこで今年度は、あらためて、厳しい子どもにスポットをあてながら、キャリア教育に関する学習プランの中学校ブロックでの系統的な活用についての研究・実践をしていきます。

<今年度の取り組み>

  • キャリア教育に関する学習プランの中学校ブロックでの系統的な活用に関する研究と実践
  •    

  • 厳しい子どもたちへの「セーフティーネット」についての研究

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『ぬくもり』

 『ぬくもり』はすべての学校・学年で使うことのできる人権読本として生まれました。その目的は、『ぬくもり』の活用実践を通して、すべての子どもたちに「生活を見つめ科学的に考える力」「差別を見抜き、はね返す力」「仲間を大切にし、民主的・主体的に行動する力」をはじめとする、あらゆる差別からの解放をめざす力を育てることです。そのためには、家庭訪問で見えてくる、子どものより具体的な実態や、親の思いをていねいにつかむことが大切です。そしてその実態や思いを基盤として、教材を選定し、授業を行う必要があります。
 昨年度、『ぬくもり』研究推進委員会では、「子どもたちの人権感覚を高めるための、学習のあり方を探る」を研究テーマとして、おもに「ガイジ」発言に代表される障がい者差別をなくすための学習に関する教材を活用した授業の研究・実践を行ってきました。また新たに、セクシュアル・マイノリティなどの、「多様な性の在り方」についての研究・実践を始めました。その成果として、「ガイジ」発言を取り上げた教材を活用した人権学習を行う学校が増えてきていることや、指導内容や指導方法が、単なる「禁句指導」ではなく、「当事者の思いや願いを大切にした指導」へと工夫がみられるようになったことが挙げられています。しかし課題として、教師の人権感覚を磨くことの重要性が指摘されました。
 そこで今年度は、各学校での『ぬくもり』のさらなる活用をめざした取り組みを進めていきます。さらに、「多様な性の在り方」について、子どもたちを取り巻く環境や実態もていねいにつかみながら教材づくりを行っていきます。

<今年度の取り組み>

  • 「多様な性の在り方」についての教材作成に関する研究と実践

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部落問題学習

 私たちがめざす部落問題学習とは、「差別を見抜き」「差別を許さず」、そして「差別をなくそう」と主体的に行動する子どもを育成していく学習です。そして部落問題学習を展開する際には、「部落差別の現実に深く学ぶ」という同和教育が大切にしてきた原則のもとに、被差別当事者の思いや願いをしっかりとつかんだ上で学習を展開する必要があります。
 昨年度、部落問題学習研究推進委員会では、「小中連携を踏まえた、社会科における部落問題学習」を研究テーマとして、「福岡発!今Dokiの部落史学習」を継続的に活用した授業の研究・実践を行ってきました。また、校内人権教育研修での部落問題に関する研修のあり方について研究・実践を行ってきました。その成果として、部落問題学習における「賤称語指導」のあり方についての授業実践を提起することができたことや、校内人権教育研修おける部落問題に関する研修の重要性が明らかになったことなどが挙げられました。しかし課題として、各学校や職員間での、部落史・部落問題学習の取り組みに対する認識の差や、研修などの取り組みに大きな差があることが挙げられました。
 そこで今年度は、教師の部落問題に関する科学的認識を高める研修について研究・実践を行うとともに、子どもたちに、部落問題に関する科学的認識を身につけさせる学校と家庭が協働した取り組みの研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>

  • 賤称語の指導を前提とした授業プランの作成に関する研究と実践
  • 「賤称語の指導を前提とした」職員研修の在り方に関する研究と実践
  • 部落問題学習の入り口としての「部落問題の用語解説集」の作成に関する研究と実践

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学力保障

 子どもの学力を保障していくためには、学校の授業のあり方だけを工夫するのではなく、子どもの学びを確かなものとするために、学校・家庭・地域の総合力で子育て・教育を進めていくことが必要です。つまり、学校での学力保障の取り組みを確かなものとするためには、子どもたちの「わかった」「がんばった」「できるようになった」というようなことを、家庭訪問を通じて伝えることも重要です。そして保護者にも同じ視点で子どもたちをほめてもらい、「もっとがんばろう」「もっとできるようになりたい」といった学習に対する意欲を高め、家庭学習の定着につなげるような取り組みが必要です。
 学力保障研究推進委員会ではこれまで、「学力」の3つの視点のうちの「学習理解力」にスポットをあて、特に、検証軸の子どもが「勉強がわかった」「勉強って楽しい」といえる授業づくりこそが、すべての子どもたちの学力保障の土台となると考えてきました。そして昨年度は、「厳しい課題をもつ子どもを中心に据えた授業づくり」を研究テーマとして、「型」や「カルタ」を活用したわかる授業づくりの研究・実践を行ってきました。その成果として、「厳しい子どもたちの授業に対する意欲の向上や、学習理解力の向上に一定の成果があった」などが挙げられました。しかし課題として、「子どもたちの授業に対する意欲の向上が、必ずしも家庭学習の定着、ひいては学力の向上につながっていない」などが挙げられました。
 そこで今年度は、学力保障の取り組みが、「ほめてほしいことを・ほめてほしいときに・ほめてほしい人から」ほめてもらい、「もっとがんばろう」「もっとできるようになりたい」といった学習に対する意欲を高め、家庭学習の定着、ひいては学力の向上につながるような取り組みの研究・実践を行っていきます。

<今年度の取り組み>

  • 厳しい子どもの実態をしっかりと把握し、子どもの姿から始まる教材研究を進め、子どもの姿を通して教師の実践を考察していく過程を大事にした学力保障の研究と実践

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(3)信頼できる先生がいる

 子どもにとって、学校に自分のことをわかってくれている先生、信頼してくれている先生がたくさんいることも、楽しく学校に通えるための重要な要素のひとつです。
 子どもたちから信頼される先生になるためには、

  • 子どもを知る
  • 教師の人権感覚を磨く
  • つながりをひろげる

という昨年度の活動・研究課題に取り組んでいくことが、前提です。

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(2)友だちがいる

 「友だちがいる」ということも「学校の楽しさ」の重要な要素のひとつです。
 すぐにたたいたり、悪口をいったり・・・・。クラスにはさまざまな子どもがいます。その行動が自分には理解できない友だちに対して、「また、○○やん・・・。「○○ちゃんは悪い子だから・・・」などどきめつけたり、「どうせ言ってもわからんもんね」とあきらめてしまうことがあります。
 逆に家庭でいろいろな悩みを抱えている子どもたちは、「みんなとは違う」「自分だけ」という気持ちから、「だれもわかってくれない」「みんなには知られたくない」という気持ちになり、時には自分自身や家族のことを否定的に見てしまい、その気持ちが学校での様々な行動として表れてくることがあります。
 一人ひとりが違ってあたりまえだという感性を育てることは大事なことです。その手立てとして集団づくりがあります。集団づくりとは、一人ひとり違った個性・生活をもった子どもたちを、ていねいにつないでいくこと、そして、お互いの存在を尊重しながら信頼で結ばれた関係をつくることです。
 そのためには、子どもたちが、友だちのよさだけでなく、つらいこと、きついことなど一番言いにくいことだけど、でも、本当は一番わかってほしいことを理解しあう必要があります。
 教師がわかっているだけ、教師と子どもの関係だけではだめなのです。子どもたちが、学校では見えない日々の生活を互いに語り合えるような関係をつくることで、「家でそんなことがあったんだ」「わたしといっしょだ」などと互いに共感しあったり、「○○さん、がんばってるな」「○○さんってやさしいな」などと友だちのがんばりやよさに気づいたりしていきます。そんなあたたかい受けとめの中で、「みんなが聞いてくれた」「自分だけとちがう」という安心感をもつことができるのです。
 このような関係をつくることが、ありのままの自分を受けとめてくれる「友だちがいる」ということにつながるのです。

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(1)勉強がわかる

「勉強がわかる」ということは、子どもたちにとって「学校が楽しい」ことの重要な要素のひとつです。「低学力」の子どもたちが、授業中どうしているのかを見つめ、その子どもたちの表情や動きを見ながら、授業のありかた、すすめかたを考えていくために、検証軸の子どもを設定しました。そして、検証軸の子どもを据えた授業を重ねることで、「低学力」の子どもの側から授業のあり方を問い直し、わかる授業づくりを模索してきました。
 また、「低学力」の子どもが、楽しく、学びやすくなるように、導入から終末までの教材や展開をしっかり組み立て、単元全体を1つの流れとして構成する作業が不可欠であるということから、「授業プラン」づくりの取り組みも行ってきました。
 さらに、学校の1日の大半を占める授業の中で、子どもたち一人ひとりが、「わかった」「やればできる」「がんばってできるようになった」、そしてそこから、「もっとがんばろう」「もっとできるようになりたい」というようにして、学びの過程における成功体験を積み重ねさせていくことを大切にしなければなりません。そして、その授業中の成功体験を、家庭訪問などを通じて家庭に伝えることで、保護者にも同じ視点で子どもたちをほめてもらうこともできるのです。
 これらのことが自信となり、自分についての肯定的な見方ができるようになり、自尊感情が育つことにつながっていけば、次の学習への意欲や積極性が生まれ、ひいては、自己実現をめざすことへとつながっていきます。
 「勉強がわかる」ことの土台として授業のあり方も大切です。授業とは、教師と子ども、そして、子どもと子どもの信頼関係を育む大切な場です。子どもが学校に来るのが楽しいということは、クラスで安心して学べるという落ち着いた授業をつくっていくことが必要です。

 まちがったらどうしよう。ドキドキしながら発表したら、「○○さんと同じです。」「○○さんに付けくわえます。」「○○さんの考え方は○○だと思います。」と友だちが考えをつないでくれた。発表してよかった。

 教師や友だちからの言葉の暴力、「わからない、できない」ことが苦痛に感じられる授業、授業中に失敗したりまちがえたりしてからかわれる授業、これでは落ち着いて集中して学ぶことが保障されないだけでなく、教え合いや学び合いが行われにくいクラスになってしまいます。
 教師も子どもも、もう一度、友だちがまちがった答えを出してくれたことが自分たちの考え方を確かめたり、深めたりするために役立っているということを再確認し、「友だちの誤りや失敗を大切にする」という考え方や雰囲気づくりを、日常的にしっかりと根づかせていかなければなりません。

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